久々に読んだ本をアップ。
小島信夫/うるわしき日々
小島信夫と言えば、「抱擁家族」。
小島信夫を抜きにして、日本文学は語れません。
その続編ともいわれるこの「うるわしき日々」。
「抱擁家族」は学生時代のバイブルと言っていいくらい、勉強した本。
勇んで読みましたが…結構難解(´・ω・`)
「抱擁家族」より、時代は複雑化し、現代化、個人化は進みます。
止まることのない雨漏りをふさぐように、守るべきものがあるかどうかさえ不確かなまま、互いに「抱擁」を試みる「抱擁家族」。
ストーリー、ピンとこない方はこちら。ネタバレ注意。
抱擁家族の時代は1965年。
うるわしき日々は1997年。
実に30年。
私小説に近い形で、主人公三輪俊介を描く小島はすでに80代。
アル中の俊介、記憶の飛ぶ妻、かすかな断片をつなぎ合わせる老作家。
あまりに深刻な状況、でもどこか軽妙。
そのバランスは晩年の小島でも健在。
救い、結論は描かれていません。
いや、流れるような抑揚のないストーリーの中に作者は見出しているのかもしれません。
結論めいたものがあるとすれば、
終盤、保坂和志と思しき作家が猫について語るエピソード。
~死んだネコが、いつも通っていた道筋の空気が揺れていたのは、ネコ自身のことであるけれども、それを感じているのは僕だけだ~
それを受けて、三輪俊介に姿を借りた小島は、
~ペットを思う人はみなそのような個人的な思いをもつのだろうか。その個人的思いこそ大事だと思っているのだろうか。
ずっしりと、あとからヘビーになってくる小説です。
「抱擁家族」をとりあえず読んでから、みなさんどうぞ。
「抱擁家族」、ならびに庄野潤三「夕べの雲」は、江藤淳の評論「成熟と喪失」とセットで。
小説好きの方、文学部および社会学部の方は必読(‘ω’)ノ